「お茶を吸う」という体験から見えた新しい日本文化のかたち。「OCHILL(オチル)」を通して作りたい世界とは<後編>

前編に引き続き、後編ではOCHILL(オチル)の核となる3人の出会いやそれぞれが大切にしている哲学に触れていきます。

3人の出会いと「OCHILL」を立ち上げるまでの経緯


photo by sakaguchi koji

ーー3人の出会いと「OCHILL」を立ち上げるまでのストーリーについて聞かせてください。

たくみさん:磯川さんとは、北海道でゲストハウスを運営しているStaylink LLCの柴田涼平さんのコミュニティ「場作りの学校」で知り合いました。

コミュニティのメンバーをライブ配信で紹介する企画があり、その第一弾が私でした。

それを見て、リアクションをくれたのが磯川さんで。

磯川さんのいわしくらぶは水道橋、私が運営するクリエイタースペース「ChatBase(チャットベース)」が末広町で距離も近く、よく遊びに行くようになって。

すると自然と磯川さんと話すことも多くなり、事業や売り上げの相談に乗ったりしていました。

特に話を聞いてて面白かったのが、店舗を増やそうとして増えたのではなく「自然と増えていた」っていう部分で。

実は、東京と北見の店舗以外は、全てフランチャイズのような形で展開しています。

自らお店の看板を作り名付けることもできるのに、あえていわしくらぶを名乗るってことは、そこにいわしくらぶなりの新しいビジネスモデルがあるなと感じて。

だから、僕はフランチャイズしている人から手数料をもらうのではなく、新しい店舗を作るのでもなく、お店を増やさず、いわしくらぶが成り立つ方法を探っていました。

ーー「自然と店舗が増える」ってすごく良い流れですよね。

たくみさん:名乗りたいってことは、いわしくらぶがブランド化している証拠じゃないかと思って。

そこからお金をとれなくても、そこに何かを置かせてもらい、店舗で物を売ることならできそうだなと。

最初はトートバック、Tシャツといったグッズを考えましたが、徐々にシーシャのパイプ、オリジナルのフレーバー、いわしくらぶならではの空間や体験はなんだろうと考えていく中で、「OCHILL」の話になっていきました。

わたるさん:普段は広告会社でクリエイティブ職をしながら、yutori、blowout 、Cinemallyといったスタートアップ企業でブランドのPRデザインをしています。

たくみさんの会社MIKKEでは取締役をしています。

一緒にいる時間が長いので、僕も自然といわしくらぶに入り浸るようになって。

過去2年、仕事でSXSW(サウス バイ サウスウエスト)に視察に行き、次は出展したいとたくみさんと話してて。そこで、海外に出すべき日本の文化は何だろうと振り返ってみると、いわしくらぶには、実は今の日本っぽさがつまっているんじゃないかなと思ったんです。

シーシャって、アラビア語が書かれた大きな容器に、暗いところで吸うみたいなアングラな雰囲気があるじゃないですか。

※米国テキサスで開催される、世界最大のクリエイティブ・ビジネス・フェスティバル

ーー確かに、シーシャ初心者からすると、ものすごいあやしいイメージを持ってしまいます……。

わたるさん:「いわしくらぶ」に来て感じたと思いますが、ここはとても明るくシーシャを介して人が集まり交流できる場所ですよね。

ブルーボトルコーヒーのように洗練されたミニマルなデザインや、逆に漆塗りなど、もっと日本らしいシーシャができるんじゃないかと思って、このプロジェクトが進みました。

「味噌シーシャ」や「出汁シーシャ」も作りましたが、なかなかうまくいかなくて。

フレーバーもゼロから日本茶でシーシャを作ってみると、とても美味しかったんです。

Twitterに投稿したら予想外の反響で、これをきっかけにプロダクト開発を本格化させて、半年で法人化、クラウドファンディングへの掲載、SWSXに出展と、いろいろな方の紹介もあり一気に話が進みました。

もはや、「深呼吸」さえもやるべきことになっている。そんな現代人に「OCHILL」を届けたい


photo by sakaguchi koji

ーー「OCHILL」に込められた想いやコンセプトを教えて下さい。

わたるさん:CHILL(チル)は、「Chill Out」(チルアウト)から由来する俗語で「くつろぐ」や「落ち着く」という意味を持っています。

特に若い世代を中心に使われています。

これに「おもてなし」「おめでたい」のように、自然に感謝する意味を持つ、”O(御)”という接頭辞をつけています。

海外では「SUSHI(寿司)」ですが、日本では皆が「お寿司」と言うのに近いです。

また、オチルという言葉自体には、「恋に落ちる」「心が落ち着く」「眠りに落ちる」「仲間と落ち合う」など、”落ちてはじまる”物語がそこにあり、「無意識のうちに結果に落ちる」体験をもっと作れたらという想いが込められています。

ーーOCHILLという言葉には、さまざまな文脈が含まれているんですね。この「OCHILL」を通して、どんな価値を提供していきたいと考えていますか?

わたるさん:特に海外だと「マインドフルネス」「メディテーション(瞑想)」のようなテーマに関心が集まっています。

それは、インターネット時代におけるデジタルデトックスへの需要でもあり、リラックスする瞬間を皆どこかに求めているからだと思います。

だけど、ウェアラブルデバイスから、「深呼吸しましょう」という通知がくるまでになり、もはや「深呼吸」が一つのタスクになっている気がするんです。

いわしくらぶにいる時は、シーシャを吸いたいから来るというよりは、なんとなく仕事しにきたり、落ち着いたりして、気がつくとリラックスしていることが多かったんです。

それはなかなか作れないものですよね。日本の茶道や禅にあるマインドを「OCHILL」を通して、もっと現代的にアップデートできればと思います。

磯川さん:自分が丁稚奉公していた「読書のすすめ」という本屋の先生が茶人に育てられた人で。僕もその方に倣ってお茶を学んだり、茶道、神道、禅に関する本を読み、日本古来の考え方に触れてきました。

たくみさんとは、よくそんな話をしていて、フィーリングが非常に近しいです。

たくみさん:この3人のバランスでいうと、僕と磯川さんは人の内面から考えることが多いんです。

その点、わたるさんは社会とのつながり、外の世界を知っていて、客観的に見て、良いものをより良くして広げていくのが上手いです。

わたるさんが加わったことで、「お茶を吸う」という仮説が成り立ち、「OCHILL」というコンセプトやプロダクトが誕生しました。

わたるさん:磯川さんは「空間とか体験」という文脈で、たくみさんは「深呼吸」という文脈で、僕は外側から「ジャパニーズチル(茶道や禅)」という文脈で。それらがうまく調和して、「吸うお茶」に集約されました。

新しいことというよりは、既存の組み合わせによる新たな発見というか。再解釈した結果、「OCHILL」が生まれたんだと思います。

「いわしくらぶ」に来ると、なんだか自然と落ち着くんです。この体験をみんなにも共有したい


photo by sakaguchi koji

ーー今後の展望を教えてください。

わたるさん:僕らが本当に売りたいのは「僕らがいわしくらぶで感じた体験」なんです。

この体験ができる空間をもっと増やしていきたいですね。最近、たばこの規制が厳しくなり、喫煙者が排他されている空気がありますよね。

だけど、発想の転換で「OCHILL」を取り入れて、喫煙所がわりにノンニコチン・ノンタールの吸うお茶が味わえれば、空間としても癒される「茶室」みたいになって面白いですよね。

呼吸が浅くなっている現代人にとって、もっと呼吸を意識できる空間を作っていければいいなと思います。

たくみさん:意外だったのが、「OCHILL」に対してお茶の専門家からのポジティブな反応が多かったことです。

僕らは、新しい「吸うお茶」という文脈を見つけただけで、お茶に関しては素人です。

むしろ、常に素人目線でありたいと思っています。「自分たちなら吸うお茶をもっとよくできる」というお茶の専門家や茶園の人とタッグを組んでいきたいです。

磯川さん:OCHILLを開発することが面白くてハマってしまって。こうなったら「吸うお茶」を「新しい”道”」の一つにしたいですね。

シーシャは炭で熱を入れるという構造上、どうしても温度が高くなってしまって、なかなか香りを引き出すのが難しいです。

今後は、お茶を飲むのと同じくらいの純度に、さらに「利き茶」ができるくらいまでに香りを引き出せれば理想です。お茶に関わる人たちが豊かになるような取り組みになればいいなと思います。

クラウドファンディングのページ「日本発のシーシャ『 #吸うお茶 』のプロダクトを作ります!」はこちらから(2月19日まで)https://readyfor.jp/projects/iwashiclub-ochill

磯川 大地(いそかわ・だいち)さん
24歳でシーシャカフェ『いわしくらぶ』を北海道の北見で創業。「カフェづくりは、まちづくりでもある」と考え、2014年に地域情報を発信するWeb番組『オホバン』を開局。その経営のかたわら定期的に旅に出かけ、2016年には地方と世界をつなぐ貿易事業を開始。「地方と世界をつなぐハブをつくろう」と掲げ、その後『いわしくらぶ』を東京と富山にオープン。

井上 拓美(いのうえ・たくみ)さん
MIKKE Inc. CEO / リバ邸 Inc. 取締役
飲食店やIT企業経営を経て、MIKKEを創業。クリエイターのベーシックインカムとしてコミュニティスペース「ChatBase」を立ち上げ、ラジオ番組や絵本、ホテルやWebメディアのプロデュースをはじめ、銭湯や廃ビルのリブランディングをなどを手掛ける。

中沢 渉(なかざわ・わたる)さん
MIKKE Inc. 取締役
外資系広告代理店にて、CreativeとしてTVCMからSNSまでメディアを横断したシナリオ設計とコンテンツプランニング・クリエイティブディレクションを手がける傍ら、yutori, MIKKE, blowout, Standbyme, 渋谷109 など、複数のスタートアップやブランドにて PR Design を担当。

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俵谷龍佑(たわらや りゅうすけ)
ライティングオフィス「FUNNARY」代表。大手広告代理店でリスティング広告のプランナー業務に従事。その後フリーランスに。留学、睡眠、健康、経営、ライフハック、マーケティングなど多くの分野で執筆に携わり、さまざまな企業のアクセスアップに貢献。執筆記事数は1000本を超えます。SEOと読みやすさを意識したライティングには定評があります。現在は、働き方・地方創生・食という分野を中心に、取材、イベントレポートなど、さまざまなタイプのコンテンツ制作を行っています。
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