1192年、源頼朝によって創設された歴史ある街、鎌倉。小町通り、長谷の大仏、鶴岡八幡宮など、古くから多くの人に愛される観光地として知られています。
CHABAKKA TEA PARKS(チャバッカ・ティーパークス)がある「御成通り商店街」は、歴史の長い店も、新しいお店も立ち並ぶ、伝統・歴史と新しい文化が織りなす魅力的なエリアとして知られています。
店内に入ると、茶香炉から放たれる芳醇な香りが鼻をかすめます。スタイリッシュな茶筒やグッズが壁際にディスプレイされ、まるでオシャレな雑貨屋さんのような雰囲気で、一般的な日本茶ショップとは一線を画しています。
今回は、CHABAKKA TEA PARKS代表の三浦さんに創業までのストーリー、日本茶へのこだわりについて伺いました。
前職のアパレル会社で、ものづくりに関わることの面白さと出会う
――若い頃から起業したいという想いを強く持っていた三浦さん。前職のファッションの仕事で、伝統産業やものづくりに関わることの面白さや価値に出会います。
昔からファッションが好きで、ずっとファッション業界にいました。しかし、社会人4〜5年目に、ファッションは手段の一つでしかないことに気づきました。例えば、デニムは岡山、レザーは岐阜と、それぞれ産地がありそこに生産者がいます。この構図は、どのものづくりの現場も一緒だと思います。
知らない人に生産者の想いを伝え、それが生産者の活力となり、そして僕ら(会社)の価値として還流する。こういった”三方よし”の関係性を作ることに魅力を感じました。
前職のTOKYO BASEには「日本発ブランドを世界に発信するファッションカンパニー」というビジョンがあります。「茶農家さんの想いをエンドユーザーに広く伝え、日本茶業界を活性化する」という想いの根源は、まさにこの会社で培った経験から来ていると思います。
――「アパレル業界で史上最速の上場を目指す」という目標を達成し、いよいよ自身の夢である起業という道へ。起業のネタに悩んでいた時、静岡の実家で何げなく飲んだ日本茶に可能性を見出しました。
TOKYO BASEには、接客から買付け、商品開発、経営まで関われる「オーナーシップ型スタイル」という仕組みがあって、ここで起業に必要な知識やノウハウを全て学びました。
そして、入社8年目で「アパレル業界で史上最速の上場」を達成することができました。その頃、30歳になる手前ということもあって、そろそろ自分の野望である起業に向けて準備をしようと思い、動き始めました。ただ、起業のネタが決まらなくて……。
ある時、静岡の実家に帰省する時があり、その時に飲んだ日本茶がとても美味しくて。もっと「日本茶を知りたい」となりました。
スイッチが入るとすぐに行動したくなるタイプで、社長に退職の相談をしました。入社前から、タイミングが合えばいつでも起業すると伝えていたので、快く送り出してくれました。
“オシャレ”だけじゃない。そこに本物の味がある
――「日本茶のコアなファンよりも、まだ日本茶を知らない潜在層にアプローチしたい」ここにはどのような想いがあるのでしょうか?
ターゲットを「バリバリ働いている20〜30代」に設定していました。日本茶には「敷居が高い」「飲むのが面倒」という保守的なイメージがあり、なかなか手を出しにくいと思います。
ドリップやサーバーといった新しい入れ方で、日本茶を嗜好品として提案することで、潜在層である若い人たちが興味を持てば、長期的に業界は活性化すると信じています。
また、新しいやり方をするだけで終わらず、品質も妥協しません。お茶は「一番茶」「シングルオリジン」「オーガニック(または今後オーガニック)」「若い茶農家さんのお茶」を基準にセレクトしています。
シングルオリジンにこだわるのは、品種のそれぞれの個性を楽しんでもらいたいからです。表層的な良さで満足せず、本質的な価値を追求することで、新しい取り組みも受け入れられると思っています。
――今の日本茶業界にある後継者不足や放棄茶園といった課題を、新しいことに挑戦してい若い茶農家と手を組んで解決し、日本茶業界を盛り上げたいという想いが三浦さんにはありました。
各地の茶園に行きましたが、開墾すれば品質の良いお茶ができるのに、人手不足でやむなく放棄茶園になっている場所も多く見てきました。
しかし、そんな課題の中でも、しがらみを感じながらも、新しいことにチャレンジしている若手の茶農家の方もいます。その人たちと手を取り合って、まだまだ日本茶の魅力を知らない人に発信していきたいです。
また、これは日本茶業界に限らず、ものづくり業界全体に共通する課題ですが、匠の技術の醸成、伝統的な技の継承は一級品なのに、魅力を伝えたり、巻き込むことが上手くできていないように感じます。裏を返せば、まだまだやれることがたくさんある、無限の可能性がある魅力ある業界だと思います。
――ドラフトティー、サブスクリプション、レンタルスペースなど……。このような斬新なアイデアを生むコツは、「この業界だから」「このジャンルだから」という固定観念をなくすことだと三浦さんは語ります。
ライフスタイル、スポーツ、ITなどさまざまな業界から情報をインプットし、どうすればCHABAKKA TEA PARKSのフィルターを通して形にできるかをいつも意識していますね。
また、マーケットインで考えず、プロダクトアウトで作っていくことも大切ですね。ただ、手当たり次第で試していては収拾がつかないので、”オシャレかどうか”を選定の基準にしています。その後、ビジネスの観点から収益性を検討し、実行するかを決めます。
例えば、「ドラフトティー」は、サーバーでビールみたいに入れたらどうなるかという思いつきから生まれました。新しい切り口を提案し、入れ方、飲み方、楽しみ方を一新できたら面白いですよね。
システム開発の人と共同で開発した日本で唯一の”ティーサーバー”。ドラフトティーは、クリーミーで泡立ちがよく、味わいはまろやか。砂糖が入っているようなやわらかい甘味を感じる。
碾茶(てんちゃ)というお茶を使い、さらにご飯の上に碾茶の茶葉をまぶした贅沢な逸品。茶葉のほのかな渋みが、だしの旨味を最大限に引き出している。さらりと食べられるので、女性にもおすすめ。
コーヒードリップとは全く異なる、日本茶を入れるために作られた日本茶専門のドリッパー。この構想を持っていた職人さんとのコラボにより生まれた。先行販売をしたところ即完売。
鎌倉から、日本全国へ。日本茶業界に新しい風を送る
――鎌倉から日本茶業界に新しい風を吹かせ続けている三浦さん。今後は、鎌倉以外にも拠点を広げていくそうです。
鎌倉以外にも、同じように歴史や伝統がありつつ、新しい風が吹いている場所に、3〜4店舗ほど出店したいです。また、店舗だけでなくオンラインストアという手段も使って、エンドユーザーにお茶の魅力を発信し続けていきたいです。
もう少し長期的な展望でいくと放棄茶園の再生もしたいですね。例えば、茶畑のオーナー制度を作ったりして、外部の人の力を借りてもいいかもしれません。CHABAKKA TEA PARKSが、他の産地のお茶と肩を並べられるステータスになり、知らないお茶と出会えるプラットフォームのような存在になればいいなと思います。
・・・
「日本茶業界にはまだやれることがたくさんある」という三浦さんの言葉から、日本茶業界のさらなる可能性を感じました。
「CHABAKKA TEA PARKSで紹介される(販売される)ことが、さまざまな産地のお茶と肩を並べられるステータスになれば嬉しい。」と語る三浦さん。
引き続き、日本茶を身近で手軽なモノとして提案することはもちろん、生産者とお客さんをつなぐハブ的な存在として、どのような新しい取り組みを仕掛けるのか、今後も目が離せません。
CHABAKKA TEA PARKS 三浦 健(みうら・けん)さん
静岡市出身。2009年、株式会社TOKYO BASE(旧STUDIOUS)入社。立ち上げメンバーとして創業から東証一部上場までの中心メンバーとして携わり、事業部エリアマネージャーとしては店舗運営・商品企画・人材育成・新店舗の立ち上げなど幅広い分野で従事。2017年、約12年に渡り携わってきたファッション業界を卒業。2018年に株式会社Third Bayを設立。
住所:神奈川県鎌倉市御成町11-10 TEL:0467-84-7598
http://chabakkateaparks.com/index.html
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