日本茶の名産地、静岡県。日当たりが良く温暖な気候と、美しい山川に恵まれた環境は、お茶の生育にとても適しています。
静岡で生まれるお茶には産地によってさまざまな品種があります。
今回は「天竜茶」にスポットを当ててご紹介します。
天竜茶とは?
天竜茶が生産されているのは、浜松市の北側に位置する天竜区です。
天竜区は土地の約9割が森林で「天竜美林(てんりゅうびりん)」と呼ばれるほど美しい緑が広がっています。
緑豊かな山々から生まれる天竜川の清流と、山地特有の寒暖差によっておいしいお茶づくりに適した環境です。
天竜茶の歴史
天竜茶が飲まれるようになったのは明治時代からです。
静岡県では、鎌倉時代から日本茶の生産がされていたようですが、本格的に発展したのが明治時代でした。
ちょうどこの頃、静岡の茶農家である杉山彦三郎により、「やぶきた」というお茶が発見されます。
このやぶきたから、天竜茶はじめさまざまな日本茶が発展しました。
天竜茶の品種
天竜茶の代表的な品種は「やぶきた」です。
やぶきたの天竜茶は旨味と香りが強く、しっかりとした味わいが印象的です。
他に「香駿(こうしゅん)」という品種もあります。
キレのある渋みが特徴の「くらさわ」と、ミルキーな甘さがある「かなやみどり」をかけ合わせてできた品種です。
その名のとおり、まるで花を思わせる芳香が人気の天竜茶です。
天竜茶の特徴
天竜茶は基本的に浅蒸し茶です。
少ない時間でさっと蒸すことで、お茶本来の芳醇な香りが楽しめます。
同じ浜松市内でも、三方原(みかたはら)台地で作られる浜松茶は通常のお茶の倍ほどの時間をかけてじっくり蒸す深蒸し茶が主流です。
天竜茶が生産される天竜地区は、緑深い山間部です。
山の中は日照時間も短く、何より朝晩の気温差が大きいので霧もよくかかります。そのなかで育まれる天竜茶の茶葉は、浜松茶に比べてやわらかく、浅蒸し茶に適しています。
また、天竜茶の茶葉は、艶のある美しい緑色をしています。抽出されたお茶は、浅蒸し茶らしく薄い若葉色です。
実際に飲んでみると、色の薄さとは裏腹に濃い茶葉の味わいがあり、深い渋みが口の中に残ります。
この天竜茶特有のしっかりとした旨味が、お茶好きの方の間では人気です。料理の味の邪魔にならず、すっきりといただけます。
ちなみに天竜区にある春野町では「春野茶」も作られています。
すっきりした爽やかな天竜茶に比べて、やわらかく穏やかな味が人気のお茶です。
天竜茶と飲み比べてみると楽しいかもしれません。
天竜茶の生産量と価格相場
天竜区は、もともとは浜松市ではなく天竜市でした。
旧天竜市全体で、天竜茶の茶葉生産量は年間およそ180トンと言われています。
ちなみに静岡県全体だと、茶葉の年間生産量は25,000トンほどになり、全国1位の生産量です。(令和2年時点のデータ)
価格は茶葉100gあたり1,000円前後が多いようです。
天竜茶の新茶の時期
通常、新茶の収穫時期は4月下旬~5月上旬ですが、天竜茶は涼しい山の中で作られているため、新茶の収穫は少し遅めで、例年だいたい5月上旬~下旬にかけて行われます。
天竜茶はどのような味?
深く濃い味が特徴と言われる天竜茶ですが、どのような味がするのでしょうか?
実際に飲んだ方の意見の一部をTwitterからご紹介します。
2012年に摘まれたらしき天竜茶(製造は2013年3月)。
賞味期限が無期限だったため、積むこと5年。常温未開封でヒネてることもなく、力強く豊かな風味。日本茶もヴィンテージとかできるんだろうか?#茶好連 pic.twitter.com/TWIvHSDPvt
— やっとん@茶迷人 (@yattan_alohaday) November 7, 2018
講義を受けながら水出し浅蒸し天竜茶✨
お茶っ葉をパックに入れて水筒に入れるだけだから楽ちん。
水出しだと苦味が殆ど出ないからオススメです♪#茶好連#浅蒸し茶#日本茶 pic.twitter.com/xT7XKqEohB— ゆーき (@druid_no_izumi) January 7, 2020
前は掛川のお茶をちょこちょこ飲んでたのです。数年前天竜茶を飲む機会があって、旨味やら甘味やらさっぱりした風味やらが最高に口に合って、旅行に行く機会があったら買って帰ってた。
最後に買ったのがちょうどコロナ流行る前。道の駅の露天で天竜メインでお茶をたくさん売ってみえた。
— love&peace (@lovepea62153124) July 28, 2021
天竜茶。新茶はほろ苦いイメージだったんだけど、1煎目甘くって、味もしっかりしていてビックリ。2煎目は本領発揮かしっかり苦め、でも冷めるとおさまった。なんで?おいしいからいいんだけど。
3煎目の産毛がすごかった。開ききったかな。だいぶさっぱり。茶殻きれいねー#茶好連 pic.twitter.com/wp0vC9JaBg— 瀬野樒 (@teashop_rau) May 28, 2018
天竜茶のおいしい淹れ方
まずは急須に茶葉を入れます。1人あたり2gほどが目安です。
小さじ1杯が約5gなので、小さじ半分くらいです。
熱湯を注いでしまうと、お茶に含まれる渋み成分のタンニンが抽出されすぎてしまい、せっかくのお茶が苦くなってしまいます。
80度くらいのお湯で入れることで、旨味成分のアミノ酸とバランスの取れた、ほど良い渋みが引き出せます。
急須にお湯を注いで1分半ほど蒸らしたら、おいしい天竜茶の完成です。
最後の一滴までしっかりと注ぎ切りましょう。
お茶の最後の一滴は、紅茶では「ベストドロップ」や「ゴールデンドロップ」とも呼ばれ、おいしさや旨味が凝縮されていると言われています。
甘味の強い天竜茶は、水出しで飲むのもおすすめです。
水1リットルに茶葉5gほどを詰めたティーバッグを入れてしばらく置いておけば、見た目も涼やかな美しい天竜茶ができあがります。
甘味が強いほうが好きな方は、冷蔵庫で一晩寝かせるとさらに甘い天竜茶を楽しめます。
まとめ
趣深い天竜茶の世界、いかがでしたか?天竜茶特有の青々しい香りと滋味は、暑い夏にもおすすめです。
天竜地区の美しい山々が生み出したおいしいお茶を、ぜひご賞味ください。
最新記事 by 塩原大輝(しおばらたいき) (全て見る)
- お茶の美味しい抽出温度とは?何度が最適?【緑茶・紅茶・中国茶など】 - 2024年3月27日
- 「さやまかおり」とはどんなお茶の品種?濃厚な渋味と力強い香りが特徴 - 2024年3月23日
- 被覆栽培(覆下栽培)とは?抹茶や玉露などの美味しいお茶に欠かせない製造工程 - 2024年3月15日